エネルギー管理を徹底し、おいしい水と豊かな自然を守る

お多福醸造株式会社 大和工場[Case185]

 広島県が誇る「オタフクソース」で有名なお多福グループ。そのなかで、ソースの材料にも使われる食酢の開発・製造を専門に行うのが、広島県三原市大和町にあるお多福醸造株式会社だ。大和町はおいしい水と澄んだ空気、豊かな自然に恵まれた米どころでまさに「酢づくりの理想郷」とも呼べる地域。そんな環境を守るため、工場内のエネルギー管理を徹底し、自然の力をムダなく活用した省エネ活動に取り組んでいる。エネルギー管理士であり、環境計量士でもある大和工場マネージャーの中島正夫氏にお話を伺った。


見える化がもたらした省エネの成功ポイント

品質と水資源を守る省エネ活動
 工場内のエネルギー管理を徹底し、自然の力をムダなく活用した省エネ活動に取り組んでいる。季節ごとに注力する製品が異なるため、まずは電力使用の平準化に力を入れた。「省エネ強化月間」では、1週間ごとに交替制で省エネ担当を決め、デマンド閲覧サービスのグラフを出力し、朝礼の場で前日までの使用傾向をそれぞれの視点で考察を行った。また、氷蓄熱冷却システムを導入するなど設備改善も積極的だ。
 なお、『省エネの達人・企業編』動画では、山に降った雨水を溜め、ろ過・殺菌して掃除に利用するほか、工場の屋根に雨水を撒き、工場内の室温を下げるといった取り組みも紹介している。
・ERIA導入のきっかけ
・警報が鳴ったときの対処法
・エネルギー管理による波及効果
・進む設備改善


■ 導入効果

導入時期2008年5月(取材時期 2012年9月)
契約電力324kW(2011年)⇒318kW(2012年)
1.8%DOWN!
使用電力量1701,003kWh(2010年8月~2011年7月)
⇒ 1680,841kWh(2011年8月~2012年7月)
12.8%DOWN!

ERIA導入のきっかけ

 お多福醸造株式会社大和工場にSMARTMETER ERIA(以下、ERIA)が導入されたのは2008年5月。大和工場マネージャーの中島正夫氏が、導入のときから立ち会い、責任者として自然環境に配慮した省エネ活動を推進している。中島氏は、以前から電気料金に関連するデマンド管理に頭を悩ませていた。「日本テクノさんから案内を受けたときは、ちょうどコスト削減や省エネを推進しようと思っていた矢先でした。とにかくエネルギー管理においては『見えなくては何も始まらない』という意気込みで導入を決めました」。導入後はすぐに社内周知を進め、基本料金が10kW下がると年間でどれくらいのコスト低減になるのかをシミュレートするなど、とにかく全員が理解できるような説明を心がけた。社内の省エネ会議を3ヵ月に1回行い、月に1回は全体ミーティングの場で省エネ活動についても発表を行うなど、その後も継続的な意識改革を行った。

警報が鳴ったときの対処法

 電力の使いすぎを知らせる警報が鳴った場合、工場の責任者3名の携帯電話と事務所の電話にも同時に知らせが入る。それにより省エネを意識するようになり、警報後の対処のルール化が進んだ。「電力ピークのタイミングがわかり、『この時間帯で鳴ったらまずはここを消そう』といったようなルールができました。また、電力使用状況をタイムリーに把握できるようになったことはもちろんですが、デマンド閲覧サービスで過去を振り返って確認できるようになったのも画期的でした。現在と過去、この異なるふたつの電力データを照らし合わせることで、より省エネに取り組みやすくなりました」と中島氏。省エネ活動を始めてから設定した「省エネ強化月間」では、1週間ごとに交替制で省エネ担当を決め、デマンド閲覧サービスのグラフを出力し、朝礼の場で前日までの使用傾向をそれぞれの視点で考察し、発表するという取り組みを行い、電力と機器稼働の関係性について理解を深めていった。

エネルギー管理による波及効果

 大和工場は季節ごとに生産量に偏りがある。5月~6月にかけてはらっきょうが旬を迎え、「らっきょう酢」の製造が、11月~12月にかけては、かぶが最盛期となるため、「千枚漬けの酢」の製造がピークとなる。使用電力量は生産量に比例するため、繁忙期とそれ以外の時期との差がはげしいのが特徴だ。「季節ものが一時期に集中してしまうのは仕方がないことですが、それ以外の生産品目に目を向けて、デマンド管理に着目した生産の平準化ができないか、と考えているところです。それが解決できれば、コスト削減とともに作業負荷の平準化にもつながります」。最近は、新たに機器ごとの消費電力が確認できる計測器を購入し、その数値をもとに生産シフトとラインの見直しを推し進めているところだ。「まだ始めたばかりですが、日中の電力ピークを平準化することで現在の不透明な電力需給状況にも寄与できると思っています」と中島氏。

進む設備改善

 工場では、2002年から氷蓄熱冷却システムを導入。夜間に氷をつくって蓄えておき、貯蔵タンクなどの冷却に利用している。夜間は、昼間に比べて電気代の割引があるため、年間を通して比較的低コストで冷却を行うことができる。2011年には工場の屋根一面に遮熱塗料を塗り、2012年には屋根にスプリンクラーを設置。貯めた雨水をろ過、殺菌して散水することで、夏の作業室内の温度上昇を抑えている。また、冬の工場周辺は寒冷なため、冷蔵設備の温度設定を細目に管理することで、品質維持に必要な10℃以下を十分に保つことができるという。「食品製造工場ですので、もちろん品質が最優先。しかし、これからもできる省エネ活動はどんどん続けていきたい。2011年に事務所の照明をすべてLEDに刷新しましたが、今後は大きなモーターのインバーター化を行い、より効率的な生産活動を行っていきます。まだまだこれからですよ」。限界をつくらない中島氏の省エネへの挑戦は始まったばかりだ。


お話を伺ったのは

中島正夫氏

企業概要
事業内容                    食酢・調味料・醸造製品の開発・製造・販売
従業員数                   760名
所在地                    広島県三原市

省エネの達人『企業編』でも放映されました!

テレビ番組 省エネの達人『企業編』で取り上げられました。
クリックで動画を再生します。(4分00秒)



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