数値の変化を発信することで、意識の変化へつなげる

株式会社ヨシケイ宮城三重支店[Case337]

 食材配送サービスを通じ全国50万戸の食卓を応援するヨシケイグループ。その一員であるヨシケイ三重は、ヨシケイ開発株式会社宅配事業本部ヨシケイ三重として四日市にオープンした。その後、2012年8月に株式会社ヨシケイ宮城三重支店と改称し、津市、鈴鹿市にも営業所を展開している。加工食材を家庭用に箱詰めし、配送車が駆け巡る。2台の冷凍庫と1台の冷蔵庫の使用方法を見直し、大きく使用電力量の低減を実現した本社業務部係長の中川浩之氏にお話を伺った。


見える化がもたらした省エネの成功ポイント

冷凍庫のスマートな開閉で省エネ
同社の食材加工の現場では、大型冷凍庫2台と冷蔵庫1台を使用しており、食材の準備のため扉の開閉が頻繁に行われていた。庫内の温度が上昇すると、もとの温度に戻すために大量の電気を使用する。そこで原因となる扉の開閉を減らすために庫内の整理をし、作業時間の短縮や開閉回数の削減につなげた。さらに冷凍・冷蔵庫を用途ごとに上手に使い分けることで電力負荷を抑え、使用電力量約8%低減に成功した。
・省エネ活動のきっかけ
・空調の使い方の工夫
・冷凍庫と冷蔵庫の開閉回数と時間
・数値と意識の変化が成功へと

■ 導入効果

導入時期2012年11月(取材時期 2015年11月)
契約電力62kW(2013年)⇒ 49kW(2015年)
20.9%DOWN!
使用電力量204,623kWh(2013年12月~2014年11月)
⇒ 188,859kWh(2014年12月~2015年11月)
7.7%DOWN!

省エネ活動のきっかけ

 グループ会社が東日本大震災で被災したことがきっかけとなり、「遠いけど何かできないか」との思いから節電意識が芽生えた。それまでは電気料金の請求書が届いたら、その通りに支払うだけだった。そのころにデマンド制を理解し、日本テクノのSMARTMETER ERIA(以下、ERIA)を導入した。当時は目標についても漠然としており、警報が鳴っても、何をどうすればよいのかわからず、照明を切ったり、空調の温度設定を調整したりという程度であった。それでも80kW以上あったデマンドが62kWにまで下がった。今は警報が鳴った場合の対策を各所に掲示し、空調操作盤には手書きのポスターも貼っている。

デマンド抑制に活用されているERIA

空調の使い方の工夫

 前年の夏に冷蔵庫の故障があり、「正しく使うこと」を意識して、省エネ活動に取り組み始めた。契約電力10kW低減を目標として、ERIAのデマンド設定を51kWにした。どこまでできるのか不安はあったが、「電気は人が入れて、人が切るもの」だから、あくまでも運用の改善で実現しようと考えた。事務所では空調の稼働が高い割合を占めることは分かっていた。営業は9時30分から外出していき、戻ってくるのは17時ごろ。その間の営業側のオフィスで使う電気はほぼない。そこで思い切った策を考えた。事務スタッフのいるオフィスは、9時~9時30分の間空調を送風のみにし、扇風機を併用してみた。真夏は時間帯を少しずらしたりしながら、無理は禁物としたものの、事務スタッフの「少しの間であれば」という協力体制のもと、この運用は実現し成果も出た。

空調の送風と扇風機を併用して省エネを実現したオフィス

冷凍庫と冷蔵庫の開閉回数と時間

 -30℃と-20℃の冷凍庫の負荷は大きいと思っていたが、加工場が稼働しない土曜出社日と平日のデマンド閲覧サービスのグラフの差を見て、それらの使い方が大きく影響していることに気付いた。まずはドアの開閉回数を減らすための方策を考えた。配送用発泡スチロール箱に入れる保冷剤の冷却に使う-30℃の冷凍庫の開閉数を減らすには、保冷剤を出し入れする回数を減らさなければならない。48時間の冷却が終わった保冷剤を-20℃の冷凍庫に移すことで、配送箱に入れる工程では-30℃の冷凍庫は開けずに済む。-20℃の冷凍庫は、配送用の食材も保存しているので、開閉数より開閉時間の短縮と開けっ放しにしないことを重視。冷凍庫および冷蔵庫内の食材の置場を図にして、効率よく動けるようにした。さらに自分の腹回り幅での開閉を心がけ、入室したら必ずドアを閉める。冷凍庫は開けっ放しにすると、庫内温度が上がり、冷却するためにファンから出る冷気が身体に当たるため、閉めた方が寒くない。スタッフとしては少し面倒なのと、閉じ込められる怖さもあったが、協力を惜しまない。冷蔵庫の使用方法も工夫した。

冷凍庫や冷蔵庫内の効率よい使用が省エネのカギ

数値と意識の変化が成功へと

 当初は意識付けをどうするのかを悩んだ中川氏。加工場は朝6時から始業である。タイムカードは事務所の2階にあるため、打刻のために階段の照明を点灯し、戻るときには消灯していたが、以前は消し忘れで事務所のスタッフが出勤する9時までつけっ放しということもあった。会社全体として、数字を明確にして運営していたこともあり、中川氏は使用電力量を毎日発表していった。その変化を意識してもらえたことが従業員の変化につながっていった。水道についても、毎日17時にメーターを読み、電気と同様に発信していく。通常より多い場合は洗浄のスタッフと洗い方について確認。この積み重ねが全体に浸透し、当初は難しいと想定していた50kWのデマンド目標をクリアして、49kW を超えることがなくなった。「営業はチラシを配り1件でも多くの家に配送することを目標に動いている。事務スタッフや加工場スタッフは低減できた数値を見ることで、さらなるやる気を出してくれる」。空調の室外機によしずをかけたり、営業スタッフに消灯係を決めたりしながらも、なかなか思うように省エネ活動が進んでいなかったころからの変化を楽しそうに話した。

事務所の階段にある照明のオン・オフを徹底

お話を伺ったのは

本社業務部 係長 中川浩之氏


企業概要
事業内容 食材のデリバリーサービス
従業員数 55名
所在地 三重県四日市市

省エネの達人『企業編』でも放映されました!

テレビ番組 省エネの達人『企業編』で取り上げられました。
クリックで動画再生します。(4分00秒)



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